第8回 俺が生まれた慶雲元年 空には忍者が飛んでいた

どうも、ジロオです。

子供の頃は良く見たけど、最近は見ないものってありますよね。

私の場合、公園の遊具なんかが思い浮かびます。

特にあの丸いグルグル回るジャングルジムみたいな奴。

あれが一番遊んだし、思い出深いですねぇ。

 

 

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現在では危険だとして撤去されたり、画像のように固定されたりしているようです

というのも、私にはあれにまつわる思い出が一つありまして。

子供の時分、あれの達人で広橋くんという奴がいたんですよ。

グルグル回るあれの天辺からピョンと飛び降りて、キレイに着地しやがるんです。

 

もうあれは広橋くんの独壇場。

私含めて周りの全員『あれを回す係』になってしまいましたが、楽しかったなぁ。

皆で彼を忍者だナンジャと持て囃したものです。

 

最後のジャンプがこのパフォーマンスのハイライトではあるんですが、

私は回転するあれに飛びついて登り始めるところが好きでした。

 

小柄だった広橋くんが、あれに飛びつく瞬間、身体がふわっと持ち上がるんです。

その時の彼の「うおおお速い!」っていう叫びがツボでしてねぇ、

毎日一回は見てたんですが、毎回笑い転げてました。

 

しかしながら少年期の思い出というのは、美しくも儚いものです。

我々は成長期を迎え、どんどんデカくなり力強くなっていきました。

そして、我々が回すあれの回転速度もどんどん殺人的に加速していったのです。

 

広橋くんが横薙ぎにかっ飛んでいく最後の姿は、今でも目に焼き付いています。

忍者と呼ばれたアイツらしい最後だったと思いますよ。

 

それ以降の思い出に彼の顔はありません。

あれ以外に取り柄の無い奴だったから印象が薄く、記憶の中に埋もれてしまったのか。

もしかしたらどっかにぶっ飛んで行って、帰って来てないのかもしれませんね。

そこが忍者の里かなんかで、元気に飛び跳ねてると良いなって思います。

 

あれはそう、まだ慶雲の頃。

 

もう随分昔の話です。

あの日あの時、忍者は空を飛んでいました。

 

そんなノスタルジーに浸りつつ、映画のご紹介です。

 

 

 

未来忍者 慶雲機忍外伝

 

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 初公開: 1988年5月
監督: 雨宮慶太
映画脚本: 雨宮慶太

 

牙狼』などで有名な特撮とSFXの雄、雨宮慶太監督のデビュー作です。

中2番長として名を馳せている氏の、若き日の作品だけあって、

まるで小学五年生のような気合に満ちています。

 

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装着者の『気合』を計る気合度計。本人には見えないのがミソです。

 

和風、SF、サイバーパンクをこれでもかと詰め込んだ本作の世界観は、

まるでカツカレーにグラタンを乗っけたが如き大迫力。

上の気合メーターのような面白ガジェットの数々が、今にも皿から零れそうな勢いで登場します。

 

本作は70分というタイトな時間でストーリーもほぼ『帝国の逆襲』なのですが、

やけに目につく品々の数々に、観終わった後、妙に疲れるハイカロリーな作品です。

 

その素敵な、恐らく一つ一つに血と汗がしみ込んだ全てを紹介していくと、

私は間違いなく試合後のホセ・メンドーサの様な姿になってしまうでしょう。

 

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しかしながら、これら無くしてこの作品は語れません。

ジョー・雨宮の試合となれば、私も命を懸けねばならないでしょう。

というわけで、まずは我らを慶雲時代に引きずり込んでくれる素晴らしい3機を抜粋してご紹介しましょう。 

 

めくるめく慶雲観光名所案内

 

移動城塞

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四門の四百mm固定式光弾砲を装備した頼れる奴です。重すぎるのが偶に瑕。

まず冒頭に登場して、我々の度肝を抜いてくれるのがこの移動城塞。

城壁にキャタピラ付けて突撃する彼の雄姿に殴りつけられ、

本作の世界観というものを脳みそに直接叩き込まれるグッドデザインですよ。

 

ちょっとダッ・・・っこいい見た目ですが、

こういうデザイン一発で世界観を伝えてくれる奴を、出鼻に持ってくるのは重要です。

 

こいつを好きになれればこの作品を最後まで楽しめます。

逆に好きになれなきゃ、ちょっと引き返した方が良いかもしれませんね。

見た目通り、この作品の城壁のような奴なのですよ。

 

神社ウォーカー

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AT-ST?これは神社ですよ。

さて、移動城塞はあんな見た目で味方側なのですが、

対する敵の黒鷺軍団も負けていません。

よく見るとそこまで似ていない神社ウォーカーの出撃です!

しかし、よく見てしまうとやっぱりちょっとダッ・・・っこ良いなぁ!

 

やはり戦争は数だよ!ということでしょうか、

他にも神社戦車や機械の忍者「機忍」などを率いて圧倒的兵力を誇る黒鷺軍を相手に、

諏訪部軍は成すすべもなく敗北してしまいます。

 

この和風SF合戦シーンだけでもお腹いっぱいになりかねません。

が、恐るべきはこれが未だ開始10分のとこだということ。

未だ主人公も出てきちゃいないのにこのボリュームです!

 

気門

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ちゃんと名前を書いててくれているのが親切ですよね。

こいつは流石にダッ・・・っけぇなぁ!!!!!

慶雲時代、唯一の航空兵器は空飛ぶ神社という出で立ち。

こいつに乗って敵地に乗り込むので、実質ミレニアムファルコンです。

この3機が主人公登場前に続々出てくるんだからたまりませんよ!

 

はてさて、この3機が誘う濃密な慶雲ワールド。

すっかり神社は兵器 ということに疑問を抱かなくなったところであらすじです。

 

ダースベイダーが最初から味方の『スターウォーズ』ですぜ

まぁそんな感じなんですよ。

冒頭のSF合戦シーンで敗北を喫した諏訪部軍の勇士・飛勇鶴。

持ち主の気合で切れ味を増す十字剣を振るって奮闘しますが、

機忍の群れに押しつぶされて戦死してしまいます。

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刀の鍔元に『剣弾』を装填する十字剣。刀+銃は中2の絶対方程式です。

その3年後、飛勇鶴の弟・次郎丸は兄の形見の十字剣を手に、

黒鷺軍との戦いに明け暮れていました。

形勢逆転の秘密兵器『機動砲』が完成し、こいつで一泡食わせてやろうぜ!

と、盛り上がっているところ、諏訪部の姫が黒鷺軍に攫われてしまいました。

 

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こいつが機動砲、見ての通りの破壊力です。

 

流石に姫がいるところに破壊力推定六十メガトン(公式設定)をぶち込むのはまずい。

諏訪部軍は姫救出のための決死隊を結成します。

その中には兄貴の敵を討ちたくてたまらない、次郎丸の姿もありました。

 

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決死隊の面々。名前も無いようなモブですが、装備がそれぞれ違って良いんですよねぇ。

 

そんな訳で魔城ガッデムみたいな敵城へ乗り込んだ皆さん。

案の定、敵の罠に掛かって全ての希望がオジャンになりかけます。

やっぱりだめだったか~!と、思われた瞬間、敵の機忍同士が争い始めたのです!

 

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ヤッター!カッコイイ!

漸く登場!未来忍者白怒火です!
奥歯に物が挟まったような言い方もすっきり、素直にカッコイイ!ヤッター!

意志のない機忍が何故反逆を!?しかも、気合の必要な十字剣を振るいます。

訳も言わず諏訪部軍を助けてくれる彼の正体は、まぁご想像にお任せします。

 

一度死んだ彼は改造され機忍になってしまっていたのですが、

そこは持ち前の気合で自我を取り戻し、抜け忍となって戦い続けていたのです!

 

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彼の気合が溢れ出ています。

そんなハードコアな忍者と一緒に気門に乗って、敵の中枢に突撃!

フォースめいた電撃を放つ敵将・雷鳴法師を打ち倒すことは出来るのでしょうか!?

と、まぁそんなこんなですよ。

 

シンプルなストーリーながら素晴らしい造形の醸す奥深い世界観は、

まさに和風スターウォーズと言っても過言ではありません。

低予算で監督の趣味が全開なところとかも、何となく共通した部分が多いですよねぇ。

 

ただ、今作のEDシーンが映画史に残る格好良さなので、

SWのような続編は要らない気がします。

 

全てが終わり、爆散する敵城。

気門に乗って脱出する白怒火たち。

勝利はしましたが、犠牲も大きいものでした。

雷鳴法師との戦いの中で、兄の復讐に燃える男・次郎丸は戦死してしまったのです。

 

今は無き彼の気合が籠った十字剣を見つめ、白怒火は何を思うのか。

彼は救出した姫たちに別れを告げると、気門の上から空中に身を投げ出します。

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白怒火ほどの忍者ともなればこれぐらいは出来ます。

彼は史上最後の機忍、邪悪な黒鷺軍最後の生き残りです。

人間に戻るすべもなく、諏訪部に戻ったところで待っている家族もいません。

彼の居場所は諏訪部には最早ないのでしょう。

 

しかし、彼の手には次郎丸に託された十字剣があります。

この剣がある限り、彼は諏訪部のために戦い続けるはずです。

空の彼方に消えて行く気門を見つめる白怒火。

次の瞬間、彼がビャッと横っ飛びしておしまいです。

 

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このシルエットだけを残して終わりです!全ての忍者映画はこの終わり方で良いと思います

 

ここにED曲とエンドロールが流れるんですが、

この一枚絵に忍者の美学が全て詰まっています!

本当に美しい絵で、惚れ惚れしますね。

忍者映画、かくあるべし。

 

奇しくも、この横っ飛び具合は、私にあの日の広橋くんを思い起こさせるのでした。

やっぱり忍者と呼ばれる奴は最後に横方向にすっ飛んで欲しいものですね。

 

あれ?

もしかして、白怒火の正体って―――