第17回 蘇る殺人拳!『カラテ・キル』

どうも、ジロウです。

先日、暇なので夜の歌舞伎町で呆然としていた時のお話です。

 

歌舞伎町と言えば、皆さんご存じのやる気を固めた男達の欲でギラつく不夜城ですね。

その日の歌舞伎町は、そんな脂ぎった町に似つかわしくない、

漬物の鳴き声のようにしょぼくれた怒鳴り声が響いていました。

 

声の主はなんだか今まさにぬか床から出してきましたよといった風情の、

たくあん柴漬けみたいなしょぼくれた二人のリーマン。

醜い赤ら顔から察するに酔っぱらった末の喧嘩です。

 

酔っ払いの何が悲しいかと言うと、まともな事が何一つ出来なくなること。

たくあんと柴漬けもシラフの時は一端なんでしょうが、そりゃあ惨めなものでした。

 

「なんだコノヤロウ、バカヤロウ!」

 

と、2人とも威勢は大変良ろしいがフニャフニャで、まともな喧嘩になりません。

何しろ酔っぱらってタコのようになっていますからね。

軟体生物のセックス同様、手と手を取り合い、はたから見りゃホモのワルツです。

 

そんな無益なワルツも末枯れたおっさん同士ですから、体力が続くはずもありません。

馬鹿みたいに両手を繋いでぜーぜー言ってると、何を想ったのか?

本当に聞きたい。

突然、たくあん柴漬けの手をペロリと舐めたのです。

 

これには流石にぎょっとした柴漬け。

しかし、次の瞬間ニヤリと笑ってこう言い放ちました。

 

「馬鹿め!俺はさっきうんこして手ぇ洗ってねーぞ!」

 

ギャン!っと声を上げ、思わず手を離してしまったたくあんに、

柴漬けのタックルと転倒の中間のような攻撃が襲います。

2人は路上で抱き合い転がり回って、更なるディープ・ホモの世界へ。

私は家に帰ることにしました。

 

このようにですね、人間の手には一撃必殺の威力が秘められているのです。

今回は、そんな人間の可能性を見せてくれる必殺映画のご紹介。

上の話とは関係ありません。

 

『カラテ・キル』

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ここまでムキムキではありませんが、かなりイカしてますね。

監督・脚本 光武蔵人
出演 ハヤテ
紗倉まな
亜紗美
編集 サム・K・ヤノ
製作・配給 マメゾウピクチャーズ
公開 2016年
製作国 日本 

 

かつて、千葉真一御大がせっせと屍の山を築き上げた、

『殺人拳』という映画のシリーズがありました。

その名の通り、ひたすら空手で人間を殺しまくる大変奥深い作品で、

最強の男・サニー千葉の名を世界に轟かせた、映画史に燦燦と輝く名作です。

 

本作は、そんな輝ける殺人カラテ映画の流れを汲む志の高い純国産アクション映画。

そして、主演のハヤテ琉球空手をルーツに持つ大変珍しいアクション俳優です。

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地上最強の生物・範馬勇次郎もマスターしている琉球空手

素晴らしい俳優と過去の名作を思い起こさせる作風からは、

制作陣の志の高さが感じられますね。

 

さて、そんな立派な志の元に作られた本作。

おっぱいと血飛沫舞い散る残酷極楽映画の模範です!

 

志は高く、意識は低く。

大変素晴らしいことだと思いますよ。

変に格好つけた作品よりもずっと清々しく、そして合理的といえます。

邦画では、ハリウッドの大作アクション映画には予算も技術も到底敵いません。

だけど、予算が出せないなら乳首を出せば良いじゃない。

 

ヘンテコなカメラワークやら奇を衒った設定に逃げてはいけません。

これが創意工夫というものですよ!

日本映画界の明るい未来を感じたところであらすじです。

 

バイト戦士VSカルト教団

留学してた妹が変態AV業者に攫われちった!

という一行で説明出来るストーリーの元、空手マシーンの兄貴がLAで大暴れする本作。

 

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配信業で食ってるマンソンファミリーもどきの変態連中。最近良く殺されますね。

 

まずは5つも掛け持ちしてるバイトを辞めるとこからスタートです!

クソどうでもいいシーンなはずですが、何故かここが結構好き。

 

悪人をしばいている時は良いですけど、そんなことがそう頻繁にある訳でも無し。

武術の達人が普段どうやって食っているのか、疑問に思っていた人も多いでしょう。

その疑問が一気に氷塊しますよね。

そっかぁ、バイトかぁ!

 

きちんと退職のご挨拶をしてるところにも好感が持てます。

それに、どれも土方とかガードマンとかタフでハードそうな職場ばかり。

 

主人公の並外れた体力を示唆する丁寧な演出に、

アクションシーンへの期待が否が応でも高まってしまいますね!

バイトで。

 

カラテ・キルを讃えよ!Heil KARATEKILL!

まぁバイトのことは置いといてですね、

このカラテ・キル、本当に良いアクション映画なんですよ。

 

CGやSE、演出に甘いところはあります。

特に、長回し気味に乱闘を映すシーンがあるんですが、

何故かカメラがゆっくり一回転します。

見づらいだけだよ!

 

しかし、そんな欠点を吹き飛ばすだけの魅力が、

主演のハヤテのアクションにはあるのです。

 

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”手”を使った琉球空手特有のアクションがギラギラ光っています

 

殴る蹴るは言うに及ばず、

目突き、ちぎり、抉るという身も蓋も無い殺人技の数々!

普通そういうエグい攻撃はじっくりねっとり長写しされるものですが、

一撃必殺の威力を持った高速アクションの中で繰り出されるのが格好いい!

 

パルクールじみた動きもこなしますし、

まるでこの穢れた世界に舞い降りた我々の膝天使トニー・ジャーを彷彿とさせます。

 

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自己犠牲が聖人の条件なら、映画の為に自分の手足に火を着けられるトニーは天使です。

 

ともすれば漫画チックにも見えかねない構えにも緊張感が漲っていらっしゃる。

この映画で初めて知ったんですが、とんでもなく格好良いですね!

世情にはとんと疎いのですが、世界は彼を知っているのでしょうか?

とにかく個人的に推していこうと思います。

 

そんなハヤテの脇を固めるのは邦画アクション界の女番長・亜紗美

あの『片腕マシンガール』、『レイプゾンビシリーズ』でお馴染みの姐さんです。

 

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本作では片腕マシンガールならぬ片腕カギ爪ガールとして登場。ちゃんと濡れ場もあります、かぎ爪で。

日本で一番ショットガンをぶっ放すのが似合う女と組んで、

カラテ・キル(主人公の渾名)はもう殺められない止められないの大暴れ。

 

ちぎっては投げ*1、ちぎっては投げ*2の出血大サービス。

 最終的に命乞いするマンソンもどきを世界中に配信しながら、

こんにゃくの如くバラバラにちぎり飛ばして終了!

 

アクション以外にも、成り行きでぶっ殺しただけのおっさんが、

後々マスターヨーダの様な幽霊となって師匠面する名シーンや、

二回もある対日本刀戦、カラテマザーファッカー!など噛めば噛むほど味のある一作。

 

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私、ジロウも秋の夜長に一晩で3回見直しちゃった作品ですので、 

人間を素手で殺す作品に飢えた方には非常にオススメです!

*1:ここでは敵の耳や鼻や目を指します

*2:時折股間など