第6回 この地獄があればこそ咲け ムカデ人間の夢

どうも次朗です。

皆さんは子供の頃の夢って覚えてますか?

 

夢。

学校に通い始めたころから、周囲の大人に夢を見ろ見ろ言われて、

適当にでっち上げてた、あの将来の夢って奴です。

 

私はあれが本当に苦手でして、生涯で一度も掲げたことがないんですよ。

 

 

作文で『将来の夢』を書け!などと言われると、もう固まってしまって、

6時間以上机の前に座って一文字も書けねぇ・・・という有様でした。

『将来の夢』というのが全く分かっていなかったんですね。

 

何言ってんだ?この出来損ないは?という方も多いでしょうが、

『夢』というものが中々くせ者だと私は思うんです。

 

今でも合点がいかないのですが、『夢』って職業のことなんでしょうか?

思うに人間の夢、願望というのはもっと衝動的な欲望だと思うんです。

 

『医者になりたいです』みたいな夢も、

本を正せば、『金持ちになりてぇ』『女にモテてぇ』『人間を斬り刻みてぇ』

というのが本当だと思うんですよ。

 

当然ですが、欲望というのは必ずしも職業に結び付く訳ではありません。

現実にそれを達成しようとすると、道徳やら法律やら、余計な物がくっついてきます。

尖り切った欲望は妥協の金槌で叩いて捏ねて、型にはめる必要があるのです。

 

そうやってこしらえた一応の目的が、金も女も苦労しなくて、人間を斬り刻める医者。

というような感じではないでしょうか。

 

当時の私の欲求なんて『うーん、眠りたいかなぁ』ぐらいのものです。

何十年かを費やしてでも叶えたい欲望というものが私には想像出来なかったんですね。

私が未だに暇はあるけど金はもらえない下っ端仕事に甘んじている理由でもあります。

おかげでたっぷり眠れますよ。

 

だからでしょうか、私は『目標に向かって頑張る人』というのが大好きなんです。

自分に欠けている強さに惹かれるのは極ありふれたことでしょう。

 

特に妥協を知らない人、『金も女も要らない!俺は人間を切り刻みたいんだ!』

というような人が。

 

さて、前置きが長くなってしまいましたね。

今回ご紹介するのは、そういった夢に向かって頑張る男の子のお話です。

 

 

ムカデ人間2

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監督 トム・シックス
脚本 トム・シックス
製作 イローナ・シックス
トム・シックス
出演者 ローレンス・R・ハーヴェイ
音楽 ジェームズ・エドワード・バーカー
撮影 デヴィッド・メドウズ
編集 ナイジェル・デ・ホンド

 

・あらすじ

ムカデ人間と言えば言わずと知れた人間の入り口と出口を繋げちゃおう!

というアイデアを実現した映画版つくってあそぼ!です。

 

鬼畜映画の2作目ですが、1作目が劇中作として登場する珍しい造りになっています。

前作を観た主人公・マーティンが、「こんな風にやるんだ、へぇ~!」となって、

自分もやってみよう!と作り始めるのがあらすじです、ムカデ人間をね。

 

・愛すべき名キャラクター・マーティン

こうして聞くと、マーティンがただの変態のような印象を受けるでしょう。

しかし、それは誤解です。

マーティンは、夢に向かって頑張る素敵な人なんです!

 

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みんなよろしく!マーティンです!

 

うわぁっ!想像通りの見た目だよ!

 

確かに、見た目はゴミ袋に人間の首を乗っけた様な感じです。

道端に座ってたら、すわバラバラ殺人かと身構えてしまいそうですねぇ。

 

この50歳引きこもりで童貞中卒・職歴無しみたいな彼ですが、

一皮むけばバラバラ殺人犯も泣き笑いで小便ちびる、欲望と狂気の持ち主なのです。

 

普段は地下駐車場で深夜警備のアルバイトをしているマーティン。

老いた母親と2人でボロアパートに暮らしています。

この母親というのが本当に慊い糞ババアでもう。

マーティンの深夜バイトで食わして貰ってるくせに、彼をネチネチいじめるという筋金入りの毒親です。

 

実はマーティンは、軽度の知的障害と発達障害の二重苦。

オマケに幼少期に父親から性的虐待を受けていたという悪環境の九蓮宝燈です。

その罪で糞親父が塀にぶち込まれた事で、このババアはマーティンを恨みに思っているのでした。

 

まぁそんな家庭環境ですから、マーティンの精神はもうボロッボロです。

全編通してまともな台詞は一切ありません。

そりゃあこんな家庭で情緒もコミュ力もへったくれも無いでしょう。

 

唯一の宝物は、ペットのムカデと大好きな『ムカデ人間』のDVD。

お手製のスケッチブックまで作って大変な入れ込みようです。

なんと1のマッドサイエンティストハイター博士のコスプレ衣装まで持ってます。

この溢れ出る俺たち感、なんだか愛らしく思えてきませんか?

 

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ニコニコマーティン。直後に後ろの人を殺します。

 

・地獄を這え ムカデ人間の夢

前作はムカデ人間にされた人間が、どうやって脱出するのか?

という、言ってしまえばありきたりなストーリーだったのですが、

今回はムカデ人間作る側にフォーカスした内容となっています。

 

これは実は1の時点でちょっと触れられていた疑問へのアンサーだと思うんです。

 

すなわち『なぜムカデ人間を作るのか?』という当然の疑問です。

人間は手足や口を使って様々な事が行えます。

料理を作ったり、家を建てたり、ブログの更新みたいな無駄な事もそうですね。

 

そんな素晴らしい人間を、一体どうして手間暇かけてまで使い物にならないゴミにダウングレードするのでしょうか?

 

1のハイター博士の目的は、世界征服でも嫌がらせでもありません。

 

ムカデ人間を作った後、彼にそれ以上の目的はありませんでした。

無意味に新聞取りにいかせたりして遊んでいる彼の姿を見れば分かります。

直接そういう発言があった訳ではないです、ないですが、ほぼ間違いないでしょう。

 

   ただ創りたいから それが理由だったのです。

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素晴らしきキチガイ、ハイター博士


今作のマーティンもそれは同じです。

別にムカデ人間を作ったところで親の虐待も、彼の境遇も変わるはずがありません。

偶にマーティンが母親を殺したことでタガが外れて~みたいなレビューを見ますが、

それは直接の原因ではないです、母親殺す前に既に人殺しまくりですし。

 

何故創り始めたのか、ムカデ人間が好きだったからです。

好きな物に理由は必要ありません。

他人の評価も理屈も法律も道徳も常識も良識も届かない領域があるのです。

 

ただ好きだから、自分にとって大切だから創るのです。

 

その為なら親兄弟を犠牲にしようと、どんな障害があろうと乗り越えてみせる。

そこにはゴッホ北斎ベートーヴェンのような偉大な芸術家に通じる魂があります。

 

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偉大なるハードコア野郎、マーティン

 

これが、人間本来の夢や願望といったもの正しい姿なのではないでしょうか。

燻ったまま、いつかやるやる言ってるだけの俺たちとはエラい違いです。

これこそハードコア。

俺もいつかこうなりたい。

 

このようなハードコア野郎は決して挫けません。

コツコツと人を集めて、汚い貸し倉庫に捕らえた人が積もり積もって12人。

凄い!博士の3連結を超える鬼の12連結です!!!

ただマネするだけではなく師匠越えを目指す辺りがハードコアたる所以です。

 

マーティンはムカデ人間作りに虎のように狂っていますが、

一方で正しい倫理観も持ち合わせています。

周りの人間に比べると遥かにマトモに見える瞬間があるのも魅力の一つですね。

 

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 ・子どもをあやすマーティン。親はマーティンがやりました。

 

さぁそんなこんなで漸く材料も集まり、

早速製作に取り掛かろうかというところでマーティンに悲劇が襲います。

 

なんとあの婆、

ベッドの下に隠した『ムカデ人間』スケッチブックを見つけやがりました。

 

しかもなんて酷い婆でしょう。

 

マーティンの命より大事なそれを『キモい!』みたいなこと言って、

ビリビリに破いてしまうのです。

 

ゆ、許せねぇ・・・

これにはマーティンも流石に泣いてしまいます。

 

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ここほんと可哀想

しかし、マーティンは負けません。

破かれたページを一枚一枚張り合わせて治し、

コスプレ衣装を着てテンションの回復を図ります。

 

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・憧れの白衣に顔も引き締まります、似合うぞマーティン。

 

テンション☆アゲ↑アゲ↑で婆もぶち殺し、いよいよムカデ造りが始まりますよ!

とはいえマーティンには博士のような技術も設備もありません。

ガムテとホッチキスとその辺にあった刃物オペ・スタートです。

 

当然、麻酔なんかありませんからもう地獄絵図です!

私、次朗もそれなりにスプラッタは見慣れていますが、なげぇしキツいしで・・・

12人キッチリやるもんだからもう・・・

 

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・やってる本人も吐いちゃってます。

 

すまん、マーティン。

ここだけ早送りしちゃった☆

 

皆様にはこの根性無しに代わって是非、生でご確認していただきたいと思います。

Blu-ray特典でがあるそうですぜ)

 

はてさて、いよいよ12連結ムカデが完成しまして、そんなこんなですよ。

 

非常にきっつい場面が多く、ストレステストみたいな扱いを受けている本作。

そのキツさに隠れた、

マーティンという不世出のキャラクターの魅力を少しでも伝えられていたら幸いです。

 

おそいひと』という身体障碍者が殺しまくる邦画がありますよね。

あれと似たようなもんだと思えばゲテモノ感も拭えるんじゃないでしょうか。

僕はマーティンのキャラ分、ムカデの方が好きです。

 

それにやっぱりマーティンのハードコアな姿勢には見習うべきものがあります。

思い付きで始めたこのブログ、三日坊主の私ですからいつ放り出してもおかしくありません。

 

ですが、マーティンは止めなかった。

必死に頑張って自分の芸術を、ムカデ人間を作り上げたんです。

私もせめて、マーティンと同じ12連結、第12回までは頑張って続けたいですね。

 

折しも今回は第6回、ちょうど中間に当たります。

ムカデ人間は真ん中が一番辛いんだ

という言葉を胸に刻み込んで、頑張っていきたいと思います。

 

じゃあなマーティン!

自首しろよ!

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