第11回 世界の終わりに"俺"を貫け!『エスケープ・フロム・LA』

どうも、ジロウです。

最近世間じゃセンキョセンキョとうるさいですねぇ。

一体何のこっちゃと調べてみると、どうやら選挙の時期だそうです。

 

世情に疎いので何の選挙だか知りませんが、

立候補者の面構えを観た印象だと、町内会のどぶ攫い係か何かでしょう。

全く朝から晩までピーチクパーチクとはた迷惑な連中です。

 

どうせどぶ攫ったって古いヘドロから新しいヘドロに入れ替わるだけですから、

てんで興味が湧きません。

 

それでも一応投票に行くのは、私が反骨ポンコツラーメン野郎だからです。

主流派以外のところに入れておかないと気持ちがクサクサするんですよ。

しかしどうもネット世間じゃ、私のような輩には風当たりが強い印象ですね。

 

 

私の価値観では、周囲に逆らう無頼のアウトローや不良こそ格好良いのですが、

それは今や時代遅れ。

「キモーい」の一言で切り捨てられるようになってしまいました。

 

 

f:id:ZIROH:20190712141329j:plain

こんな画像を張り付けるような古臭い奴です。

私と違って、今時のSNSを駆使するナウでイケてる若人からすると、

組織・権威に逆らわず、黙って真面目に不正を見過ごす方が格好良いそうです。

これを最近の言葉だと、「忖度」と言います。

 

まぁ別にどうでも良いですが、そうなると中指突き立てたくなるのが私です。

ここは一度、反骨ヒーローの格好良さを再確認しようじゃありませんか。

そんな私のようなへそ曲がり&パンクス諸君に、オススメの映画がこちら!

 

エスケープ・フロム・LA

f:id:ZIROH:20190711225301j:plain

監督

ジョン・カーペンター
脚本

ジョン・カーペンター
デブラ・ヒル
カート・ラッセル
主演

カート・ラッセル
公開

アメリカ 1996年8月9日
日本1996年11月23日

 

前作『NY1997』は1981年の作。

筋も展開もほぼ同じですので、続編というよりセルフリメイクの色が強い作品です。

 

舞台はLA沖で発生した大地震によって滅茶苦茶になってしまった近未来のアメリカ。

何が滅茶苦茶になったって、地面よりも政治です。

 

f:id:ZIROH:20190712153334p:plain

適当言ってたらうっかり予言が的中してしまいました。

地震のどさくさに紛れて大統領に就任した宗教家のおっさんが、神権政治を開始。

憲法を改正して自分の任期を無期限にすると、恐怖の管理社会を築き上げたのでした。

地震のドサクサで政権取るだなんて、聞いた話じゃありませんか。

 

さて、イカれた偏狭ジジイの思うがままになった国家は悲惨そのものです。

ワシの気に入らないものは全部廃墟になったLAに閉じ込めてしまえ!

という抜本的なマニュフェストの元、

 

イスラム教徒、プロテスタント、黒人、アジア人、目の青くない白人、ハゲ、ハーフ、

犯罪者、売春婦、同性愛者、喫煙者、肉食者、非童貞、非処女、鍵っ子、ホームレス、

私生児、低所得者、インテリ、メガネ、デブ、ブサイク、赤髪、茶髪、障碍者、etc...

 

などを全部流刑地となったLAに閉じ込めてしまったのです。

 

はてさて、そんなこんなでゴミ箱か東海村みたいになってしまったLAですが、

よりにもよって、大統領の娘がそんなところ目掛けて家出してしまいました。

しかも、電力などのエネルギーを吸い取って文明を破壊する新兵器を持ち逃げです!

 

彼女の目的は、ゲバラの出来損ないみたいな革命家の彼氏。

その上、新兵器は衛星上から地球全土を狙える極悪兵器だったのでさぁ大変。

 

f:id:ZIROH:20190712154950p:plain

LA在住の彼からのビデオレターにメロメロです。

 

このままではアメリカだけ原始時代に戻されてしまう!

新兵器の奪還と、イヴァンカの救出を任せられるのはあの男しかいない!

伝説の犯罪王にして、かつて大統領を救った英雄!

スネーク・プリスキン!

アメリカの未来を任せたぞ!

f:id:ZIROH:20190712235201p:plain

あーかったるい

スネーク・・・?

  

反骨野郎、スネーク・プリスキンの魅力

 

f:id:ZIROH:20190712162156p:plain

眼帯、全身真っ黒のロングコートに銃。男に必要な物を全て備えています。

この素晴らしい"俺"を全面に押し出したファッションの彼こそ、

私が全映画の中で最も格好良いと思う男の一人、スネーク・プリスキンです。

ピチピチした衣装の下には、これまた主張の強い蛇の刺青がお腹に入っています。

 

f:id:ZIROH:20190712235644p:plain

ちょっとぷよっとしたお腹が淫猥です。

 

この見るからにへそ曲がりなおっさんも、元は勲章を幾つも持つ立派な軍人でした。

が、何某かの理由で除隊して以降は国家の英雄から一転、

「犯罪王」と渾名されるほどのアウトローとして名を轟かせます。

 

「絶対に警察に捕まらない」とすら言われた生きる伝説ですが、

この度は路上喫煙でしょっ引かれて、政府の仕事に駆り出されてしまいます。

 

とっくの昔に世の中に見切りを付けているおっさんですから、

釈放を条件に言い渡された救出任務なんか全くやる気がありません。

この政府の指示にいちいちゴネまくるところが本当に格好良く、そして面白い。

 

f:id:ZIROH:20190712160344p:plain

国家の存亡に関わる任務だ!と言われてこの一言、素敵過ぎます。

 

「スネークだな?」と聞かれれば、

「プリスキンと呼べ」と突っぱね、注文通りに「プリスキン」と呼びかけると、

「俺はスネークだ」とクソ中学生のような反抗を見せます。

 

しかし、どれだけ頼んでもNOしか言わないせいで、

10時間以内に解毒薬を飲まなければ死んでしまう毒を打たれてしまいました。

 

ここで初めて焦るスネークが何故か面白い。

そりゃあ、焦るのは当然なんですけどね。

ちょっと身から出た錆感があるのが彼らしさです。

 

スネークは基本的に無口でクールなタフガイなんですが、

しょうもないところで噛みついたり、普通にやり込められたりと、

非常に泥臭く、人間臭いキャラクターなのです。

 

f:id:ZIROH:20190713003124p:plain

スネークのファッションセンスを評して一言。言われてるぞスネーク。

 

この"スネークいじり"はLAに潜入してからというもの、よりいっそう調子づきます。

彼は「犯罪王」ですから、当然LA中の犯罪者たちから、

明石家さんま並みに親しまれています。

 

普通に歩いてるだけで、

「あれスネークじゃん!」

「意外と背低いね」

「死んだんじゃなかった?」

 

など、物凄く馴れ馴れしい言葉を掛けられ、

その度ムスッとした厳めしい態度になるのですが、誰も怖がりません。

それどころか逆に、

 

「なんか喋ってよw」

 

と、芸人かなにかのように扱われてしまいます。

へそ曲がりになるのも仕方ありません。

 

f:id:ZIROH:20190713125825p:plain

 

敵組織に取っ捕まってしまった際にもそのいじられキャラっぷりを遺憾なく発揮。

画面のはじっこでルームランナーに括りつけられるというなんとも地味な拷問は、

ただただスネークを虚仮にしたいだけという歪んだファン心理のなせる業ですね。

 

そして、キメる時はきっちりキメる。

チンピラどもに囲まれて絶体絶命のピンチに陥った際、

 

「この缶が落ちた瞬間に抜け・・・」

 

と、スネーク曰くバンコク式の決闘を持ち掛けますが、

言い出しっぺの彼が、缶を放り投げた直後に発砲。

まんまと騙されたチンピラどもの死体を見下ろして一言。

 

f:id:ZIROH:20190713131400p:plain

騙し討ちは基本です。

せこ・・・いや、格好良い!

 

王道を外したスネークのキャラクター性は、

まさにこの作品に通底しているパンク・スピリットを強く表しています。

 

完全に管理された社会の中で誰にも従わず、モラルも無ければマナーも無い。

あるのはただ一つ、タバコ吸いてぇという意志だけです!

ひたすら”俺”の流儀を貫くスネークはまさに反骨野郎のヒーローなのです。

 

ユートピアディストピア

この作品の非常に優れている点として、"ユートピア"ディストピア"が、

どのような物なのかを簡潔に描いている点が挙げられるでしょう。

 

例えば、

気の狂ったおっさんの価値観に支配されたアメリカは分かりやすいディストピアです。

 

f:id:ZIROH:20190713134529p:plain

LA前の収容施設には、通路に電気椅子が立ち並び、長蛇の列が出来ています。

 

しかし、この社会はおっさん自身にとっては理想の社会、ユートピアなのです。

 

一方で、そのユートピアから追放された人々の集まるLAではどうでしょうか。

罪の街、この世の地獄、生存確率0%、などと言われた彼の地ですが、

着いてみると、そこは意外にも人と活気に溢れたグッドな場所でした。

f:id:ZIROH:20190713135210p:plain

薄着のちゃんねーのいる場所が、地獄な訳がありません。

外の世界から排斥された人々にとっては、

LAこそが自分らしく、自由に生きられるユートピアだったのです。

 

この街にはなんと、

初代反骨ヒーロー"イージーライダー"ピーター・フォンダも住んでいます。

 

f:id:ZIROH:20190713135826p:plain

成り行きで一緒にサーフィンすることになったスネーク。別れ際のハイタッチが爽やかです。

 

しかし、薄着のちゃんねーや、ピーター・フォンダが住んでいるからと言って、

LAが最高の街とは言えません。

自由とは抑圧と同じように、弱者に負担を強いるものでもあるからです。

 

f:id:ZIROH:20190713140334p:plain

LAキッズはUZI武装しなければ、生き残れません。

 

ちょっとスネークと良い感じになった女性も、

LAの良さを語った直後に流れ弾で死んでしまいます。

やはりこの街も、外の世界と同じ程度にはディストピアなのです。

 

そして、この街で最も力を持つテロ集団は、

アメリカから盗んだ兵器による世界支配を目論んでいます。

 

スネークの任務は盗まれた兵器の奪還ですが、

本質的にアメリカに渡ろうが、テロ組織に渡ろうがそこに違いはありません。

恐らく、その先に待っているのは同じようなユートピアでありディストピアでしょう。

 

それ以外を許さない1つの価値観によって支配された社会。

それがユートピアであり、ディストピアなのではないでしょうか。

 

物語の最後。

機密兵器を奪還し命からがら脱出したスネークに、政府の人間が詰め寄ります。

兵器は標的のエネルギーを吸い取って、文明を0に戻してしまうというもの。

それも世界中に向けて放つことのできる文明破壊兵器なのでした。

 

スネークは、これをアメリカに渡す気は毛頭ありませんでした。

しかし、他国に渡す気もありません。

 

ではどうするのかというと、

なんとこの兵器を世界中に向けて発射することにしたのです。

スネークにとって、この世界はもうとっくに終わっているのです。

だったら0に戻した方がまだマシでしょう。

 

そんなこと出来るわけがない!と止める政府の人間へ、ビシッと一言。

 

f:id:ZIROH:20190713142917p:plain

そして世界中から文明の灯が消え、真っ暗闇が訪れます。

 

なんと、主人公が世界を滅ぼして終わりという衝撃的なENDです!!

 

ユートピアディストピアの2面性を描いて、

その全てをぶっ壊すこのカタルシスったら無いですよ!

部屋が片付かないから火つけよう、みたいな発想ですが、何も間違っていません。

この時、スネークが俺の中のベスト・ガイの座に輝いたのは言うまでもありませんね。

 

さて、

文明の明かりが消えた星の上で、どことも知らない草っぱらに一人立つスネーク。

岩陰の片隅に何かを見つけます。

 

それは誰かが置き忘れたのでしょうか、アメスピのパックでした。

その中の一本を取り出し咥えると、一服してしみじみ呟きます。

「やっと人間に戻れたぜ」

f:id:ZIROH:20190713144107p:plain

この喫煙シーンが本当にうまそうで、タバコ買っちゃいました。

いやー、カッコイイ!

近頃の喫煙者叩きなんかどうでも良くなってしまいますね!

 

私、タバコは全然吸わないんですが、

このアメスピの赤いパックは頑張って喫い切ろうと思います!

 

皆さんも、選挙の投票に行く際には是非、アメスピのパックを持っていきましょう。

無所属のキチガイにでも入れた後は、出口調査なんかシカトして、

喫煙所なんか使わず、その辺で一本喫って格好つけると良いでしょう。

 

アメスピの赤い奴ですよ!お忘れなく!

それじゃ、さよなら!